2026年6月16日
妊娠と高血圧について質問を受けることが多いので、今回まとめてみましたので参考にしていただければと思います。
妊娠前から、または妊娠20週未満で高血圧がある場合を高血圧合併妊娠といいます。似てるようで違う妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧がみられる病気です。妊娠中に、収縮期血圧が140mmHg以上、または、拡張期血圧が90mmHg以上になった場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。とくに収縮期血圧が160mmHg以上、拡張期血圧が110mmHg以上になった場合は、重症の妊娠高血圧症候群であり入院など厳重な管理が必要になります。以前は妊娠中毒症と呼ばれ、妊産婦の死亡原因のひとつとされてきましたが、最近は管理が進歩し、妊娠高血圧症候群で亡くなる方は少なくなりましたが、今でも脳血管障害の原因として注意が必要な疾患です。
妊娠中の血圧変化
妊娠中は血圧や水分量を調節するレニンの分泌が妊娠の経過とともに非妊娠時の約8倍程度に増加します。レニンは妊娠初期から増加し胎児へ酸素や栄養を送るために母体の血液量を増やす重要な働きを担っています。本来であればレニンの増加は血圧上昇を引き起こしますが、妊娠中は血管の反応性が変化するため、通常は血圧が極端に上がりすぎないようバランスが保たれています。そのため血圧は妊娠成立後よりゆるやかに降下し、妊娠20週付近で最低値となります。その後出産にむけてゆるやかに上昇します。妊娠中血圧管理はとても重要です。妊娠前より血圧測定の習慣を身につけ、自身の血圧を知っておくことが大切です。
妊娠に関連する高血圧の分類
・妊娠高血圧
妊娠以前は正常血圧で、妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、出産後12週までに正常化するもの。たんぱく尿はありません。
・妊娠高血圧腎症
妊娠以前は正常血圧で、妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、出産後12週までに正常化するもの。尿たんぱくを認める。ただし、尿たんぱくがなくても、肝臓や腎臓の機能障害、脳卒中や神経障害(子癇)、血液凝固検査の異常、胎盤機能低下による胎児発育不全などを認めた場合は、妊娠高血圧腎症と診断されます。
・加重型妊娠高血圧腎症
a. 高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までにすでに認められ、妊娠20週以降、たんぱく尿を伴う場合。
b. 高血圧とたんぱく尿が妊娠前あるいは妊娠20週までに認められ、妊娠20週以降,いずれか,または両症状が増悪する場合。
c. たんぱく尿のみを呈する腎疾患が妊娠前あるいは妊娠20週までにあり,妊娠20週以降に高血圧が発症する場合。
上記を加重型妊娠高血圧腎症と診断します。
・高血圧合併妊娠
妊娠前あるいは妊娠20週より前から、高血圧であった方が、出産まで加重型妊娠高血圧腎症の症状を発症しなかった場合。
このように妊娠高血圧症候群は上記のように分類されます。とくに、妊娠34週未満で発症する早発型は、重症化しやすいと言われていますので注意が必要です。
妊娠高血圧症候群の検査
妊娠高血圧症候群の検査の基本は、血圧測定と尿検査です。そのため妊婦健康診査で血圧測定や尿検査を行います。また妊娠高血圧腎症を発症する妊婦では、発症前から胎盤形成に関わる物質である「PlGF」、「sFlt -1」のバランスが崩れることが明らかになっており、最近では妊娠高血圧腎症を予測する補助マーカーとしてsFlt-1/PlGF比が用いられることがあります。これによりハイリスク妊婦に対する早期医療介入が可能になります。
妊娠高血圧症候群の治療
血圧が140/90mmHgを越えると安静が必要となります。また家庭血圧が160/110mmHg以上、たんぱく尿を伴う場合(妊娠高血圧腎症)では、入院管理が必要となることもあります。
生活習慣としては、塩分制限が必要となり6gから7g/日程度に管理することが重要です。
妊娠中にも比較的安全に使用できる降圧薬もありますので、医師が必要と判断した場合には降圧薬による加療が必要となる場合もあります。内服薬としてはメチルドパ、ヒドララジン、ラベタロール、ニフェジピンが使用されることが多いですが、母体や胎児の状態も考慮しつつ慎重な管理が必要となります。
妊娠高血圧症候群の早期発見と早期治療には、定期的に妊婦健診を受けて、適切な産科管理を受けることが、最も大切です。

