甲状腺機能異常
甲状腺機能異常
甲状腺は喉仏の下にある内分泌腺であり蝶のような形をしています。成人の正常な甲状腺は、約4cm、重さが20g以下で、通常は首を触っても分かりません。全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しており、血液の甲状腺ホルモンが多すぎたり少なすぎたりしないように、脳下垂体より分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。バランスが崩れ甲状腺ホルモンが、過剰や不足すると様々な症状を呈します。
甲状腺中毒症とは甲状腺ホルモンの働きが過剰になる状態です。代謝が活発になるため暑がりとなり、汗が多くなります。エネルギーが無駄に消費されてしまうため食事の量は増えますが痩せることが多いです。神経にも作用するので手のふるえやいらいら、下痢など体の様々なところに症状が出てきます。原因としては大きく2つに分けられます。
人口1000人あたり0.2~3.2人の有病率。20~30代の若い女性(男女比は1:3~5)に多い病気です。バセドウ病は、甲状腺刺激ホルモンであるTSHの受容体に対する抗体が体内で作られてTSH受容体を刺激し続けることで甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることで起こる病気です。明らかな原因は分かっていませんが、バセドウ病になりやすい体質を持っている人が、何らかのウイルス感染や強いストレスや妊娠・出産などをきっかけとして起こることがあります。
治療としては薬物治療、放射性ヨウ素療法、手術の3つの治療法があります。当院でも抗甲状腺薬による内服治療を行っていますが、2年以上継続しても薬を中止できない場合などは他の治療法を検討する必要がありますので、連携医療機関での治療を進めることもあります。
甲状腺内の結節自身がTSHと関係なく自律的に甲状腺ホルモンを産生することで発症します。結節の数により単結節性と多結節性に分けられ全体がごつごつとした甲状腺(腺腫様甲状腺腫)全体が自律的に甲状腺ホルモンを産生する場合もあります。
脳下垂体腫瘍からTSHが過剰に分泌されることで甲状腺ホルモンも過剰に作られてしまいます。脳外科など専門の医療機関での治療が必要となります。
妊娠の初期(8~12週頃)に一過性におこる甲状腺機能亢進症です。胎盤から分泌される物質が甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンが作られことで、一時的に甲状腺ホルモンの産生が過剰になります。妊婦の約2〜3%にみられ、つわりが強い方ほど起こりやすいという報告もあります。多くの場合は妊娠14〜18週頃に自然に改善することが多いため基本的には治療は行わず、経過観察となることが多いです。
橋本病(慢性甲状腺炎)などで甲状腺ろ胞構造の破壊がおこると甲状腺ホルモンは血中に放出されるため血中の甲状腺ホルモン濃度が高値になります。痛みがないため、無痛性甲状腺炎と呼ばれています。多くの場合、血中甲状腺ホルモンは3か月以内に正常化することが多いですが、その後一時的に甲状腺ホルモンが低下することもあります。また、出産後に発症する場合もあるようです。
風邪などが誘因となることがあり甲状腺の痛みや発熱を伴います。痛みに対し内服加療が必要になることがありますが、多くの場合は数か月で自然に改善します。
甲状腺ホルモンが少なすぎると、代謝が低下することで様々な症状がでてきます。一般的には無気力、疲労感、むくみ、体重増加、寒がり、動作緩慢、記憶力低下、便秘などがありますが、軽度の甲状腺機能低下症では症状や所見に乏しいこともあります。症状が強くなると、傾眠、意識障害をきたすこともあり注意が必要です。また、甲状腺ホルモンは代謝調節以外にも、妊娠や子供の成長発達に重要なホルモンなので、機能が低下すると月経異常や不妊、流早産や妊娠高血圧症候群などとも関連し、胎児や乳児あるいは小児期の成長や発達の遅れとも関連すると言われています。診断は甲状腺ホルモン低下と甲状腺刺激ホルモン(TSH)増加を確認することになります。昆布、ヨード卵、ヨウ素含有咳嗽液などヨウ素(ヨード)過剰摂取によっても甲状腺機能低下症を認めることがあります。また、甲状腺ホルモン値が正常範囲内で、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値の場合は、潜在性甲状腺機能低下症といわれます。健康な人の4~20%にみられるとされ特に女性に多く年齢が上がるにつれて増加します。持続性にTSH値が高値の場合や、妊娠を前提とした場合や妊婦に対しては治療適応となる場合もあります。
橋本病は自己免疫疾患のひとつで、喉仏あたりの不快感や圧迫感、甲状腺全体の腫れを自覚される方も多いですが、大きさは様々です。検査では抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体あるいは抗サイログロブリン抗体といった甲状腺に対する自己抗体が陽性となる病気です。徐脈、心肥大、うつ状態、アキレス腱反射低下、筋力低下、脱毛、皮膚乾燥、過多月経、低体温などの症状を呈することもあります。
脳下垂体や視床下部が原因で甲状腺機能が低下することがあります。脳腫瘍、くも膜下出血後、脳外科手術後、ラトケのう胞などが関連することがあります。
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