片頭痛|東新宿あらい内科クリニック|東新宿駅の内科・脳神経内科・腎臓内科
片頭痛

片頭痛は、頭の片側に脈を打つような痛みを生じる疾患です。症状がひどくなると、動けなくなり吐き気を催すこともあります。頭痛は数時間から3日間続き、発作は月1〜2回から週2回程度見られます。片頭痛の方の約20%には前兆が見られ、閃輝暗点(ギザギザした光)や視野欠損(視界の一部が見えづらくなる)があります。本邦の有病率は8.4%で、男性(3.6%)よりも女性(12.9%)に多く、特に10〜40代に多いことが特徴です。片頭痛は日常生活に支障を来すことが多く、有病率も高いため、学業や社会全体に与える経済的影響も甚大です。
ストレスや肩こりが原因となる緊張型頭痛は頭痛の中では最も頻度が多いですが、片頭痛を同じような症状の強い頭痛、片側だけ痛むからなど誤解する方も見受けられます。もちろん片頭痛と緊張型頭痛が混ざった混合型頭痛の方もたくさんいらっしゃいます。
また、片頭痛は繰り返すことで症状のない脳梗塞が増えることも報告されています。そのため出来るだけ若いうちから回数を減らすような予防治療が重要となっています。
なぜ片頭痛が起こるのか?
片頭痛の発症メカニズムについては、さまざまな議論が続いています。 血管の収縮と拡張、神経との関連、様々な研究がされていますが、最近では三叉神経の炎症が原因の一つとして支持されるようになっています。また、画像診断(MRI・PET)の研究から片頭痛発作の予兆期には視床下部に異常が認められるという報告もあります。
このような機序でおこる片頭痛はみなさんがイメージする頭痛というより発作に近い感じです。典型的な発作は前兆があり頭痛や吐き気が生じ、眠くなり寝ると良くなる。このほかにも光・音・においへの過敏、下痢、鼻水、発汗、めまいなども片頭痛の発作の症状の一つです。また前兆があるため片頭痛発作が来るのでは?という不安で日常生活に影響が出ることもあります。そのため予防が重要になってきます。
片頭痛の症状
- ズキズキと脈打つような拍動性の痛み
- 数時間から3日間程度続くこともある
- 痛みは片側または両側の場合もある
- 前兆がある(2割程度の人でみられる)
閃輝暗点(ギザギザした光)や視野欠損(視界の一部が見えづらくなる)、感覚異常、言語障害などを認める。前兆の前に予兆を伴うこともある。生あくび、肩がこる、なんとなく気分が悪いなど
- 光・音・においに過敏
- 吐き気をともなう
片頭痛における低用量ピルの影響
片頭痛自体も脳梗塞のリスクを高めますが、低用量ピルも脳梗塞リスクを高めることが知られています。そのため片頭痛の方では低用量ピルを使用しないほうが望ましいです。しかし月経困難症、卵巣嚢腫や子宮内膜症など、婦人科疾患を治療している場合は、治療継続が必要であるため、黄体ホルモン製剤など低用量ピル以外の治療に変更することも考慮されますのでご相談ください。
片頭痛で注意すべき生活習慣
- 空腹は発作を誘発するので、朝食を抜かず、規則正しい食生活を心がけましょう。
- アルコールを控えましょう。特に赤ワインは注意が必要です。
- 急激な気温や気圧の変化には、室内環境や服装を工夫して快適に過ごしましょう。
- 光、音、臭いが発作を誘発することがあるので、照明やPC画面の調節、耳栓の使用、騒音のある場所を避けるようにしましょう。
- 適度な睡眠を心がけましょう。睡眠時間は長すぎても短すぎてもいけません。
- 入浴は短時間で、湯温を低くして対応しましょう。
- 適度なカフェインは効果がありますが、過剰摂取には注意しましょう。
片頭痛の治療
かつては血管拡張が片頭痛の主因とされ、これを抑えるためにエルゴタミンが用いられていました。しかし、研究が進むにつれ、三叉神経の過剰興奮とCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を中心とした病態が明らかになり、治療戦略も大きく変化しました。
急性期治療
- トリプタン系薬:5-HT1B/1D受容体作動薬であり、三叉神経の活性を抑えるとともに血管収縮作用を持つことで頭痛を軽減しますが、この血管収縮作用が原因で、虚血性心疾患や脳梗塞の既往がある方には使用できないという制限があります。
- ラスミジタン:血管収縮作用を伴わない新規急性期治療薬として経口5-HT1F受容体作動薬が使用できるようになっています。三叉神経の過剰興奮を抑制することで片頭痛を軽減し、血管収縮のリスクを回避できる点が大きな利点です。
- NSAIDs、アセトアミノフェン:一般的な鎮痛薬であるこれらの薬は片頭痛では効果が限定的となる場合があります。
予防薬
片頭痛においては発作を予防することがとても重要です。片頭痛の予防治療は、長年の臨床経験に基づき、カルシウム拮抗薬(ロメリジン)、β遮断薬(プロプラノロール)、抗てんかん薬(バルプロ酸)、抗うつ薬(アミトリプチリン)などが使用されてきました。これらの薬剤は片頭痛専用の治療薬ではありませんが、神経系や血管調節に作用することで発作の頻度を減らす効果が認められています。(医薬品の保険適用外の使用を推奨するものではありません)
2021年、片頭痛治療における大きな進展としてCGRP関連治療薬が登場しました。2021年には日本でもエレヌマブ(erenumab)、フレマネズマブ(fremanezumab)、ガルカネズマブ(galcanezumab)の3種類のCGRP関連抗体薬が使用可能となり、片頭痛の予防治療に新たな選択肢となっています。
CGRP関連製剤
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛の病態に深く関与する神経ペプチドとして知られています。三叉神経血管系の重要な調節因子であり片頭痛急性期において血漿中のCGRP濃度が上昇することが報告され、発作時の神経伝達物質としての役割が注目されました。CGRPの制御が片頭痛治療において重要であることが示唆されています。
- ガルカネズマブ・フレマネズマブ:CGRP分子の作用を阻害します。CGRPの受容体への結合を防ぐことで、片頭痛発作の誘発を抑えることができます。
- エレヌマブ:CGRPそのものではなく、CGRPの受容体に作用し、その活性を阻害することで痛みの発生を抑制します。
臨床試験では、CGRP関連抗体薬の有効性が確認されており、約半数で頭痛日数が50%減少、約10人に1人で頭痛の消失が認められました。またCGRP関連製剤は片頭痛の病態に特異的に作用するため、副作用が少なく、継続しやすいというメリットがあります。特に従来の治療では効果不十分だった片頭痛の方にとって、新たな選択肢となっています。