糖尿病関連腎臓病(DKD)
糖尿病関連腎臓病(DKD)

日本の糖尿病患者は、強く疑われる人(約1000万人)と可能性を否定できない人(約1000万人)を合わせると約2000万人と推定されており、20年間で急増しています。そのうち現在医療機関で治療を受けている患者数は約552万〜579万人程度と言われています。
糖尿病が原因で腎臓の機能が低下する病態は「糖尿病性腎症」、「糖尿病性腎臓病」と言われていましたが、日本腎臓学会と日本糖尿病学会の両学会において現在は「糖尿病関連腎臓病DKD(diabetic kidney disease)」とされています。糖尿病は透析導入の原因疾患において最も多く進行を少しでも遅らせるため早期の介入や治療が重要となります。
尿検査、とくに尿アルブミン測定はDKDの診断や予後判定をするうえで重要な検査項目で定期的な測定が推奨されています。アルブミンは、肝臓で合成され、血液(血漿)中のタンパク質の約60%を占める最も多いタンパク質です。糖尿病では高血糖による血管障害のため腎臓で血液をろ過する「糸球体」という部分の網の目(フィルター)が、傷ついて目詰まりしたり、穴が広がったりします。そのため本来なら体に留められるはずのタンパク質(主にアルブミン)が、壊れたフィルターを通り抜けて尿に漏れ出てしまいます。通常の尿検査では陽性になりにくい微量のタンパク(アルブミン)が漏れる段階で発見し治療すれば、進行を止められる可能性があります。
尿アルブミンは変動するため複数回測定をすることが望ましいとされています。また、早期診断のため糖尿病患者には少なくとも半年に1回は尿アルブミン定量検査が推奨されています。
HbA1c 7.0%未満にマネジメントすることにより、DKDの発症や進展を抑制することが期待できるとされています。しかしながら、低血糖や心血管イベントのリスクが高い症例では一律の推奨は行わず治療内容や併存症など患者背景に応じて個別に設定することになります。進行したDKD患者では、腎機能低下に伴いインスリンや薬物のクリアランスが低下し、腎での糖新生も低下することから重症低血糖のリスクが増加します。その他、注意する点としては腎機能低下例では赤血球寿命の短縮やエリスロポエチン製剤の影響によりHbA1cが偽性低値を示すことがあるため正しく評価出来ていない場合があります。血糖マネジメントの指標としてグリコアルブミンの測定も有用ですが低アルブミン血症を呈する場合、グリコアルブミンが低値を示すことがありやはり結果の解釈には注意を要します。
DKDの発症,進展を抑制するためには集学的治療が重要です。集学的治療には血糖,血圧,脂質の厳格なコントロールに加えライフスタイル介入(食事療法,運動療法,禁煙指導)が含まれます。血圧に関しては、家庭血圧で125/75 mmHg未満を目指すことが望ましく、その達成のためには食事の減塩が欠かせません。具体的には、1日の食塩摂取量を6 g程度に抑えることが理想とされています。また、たんぱく質の摂りすぎが腎臓に負担となる場合もあるため腎症が進行している場合には、医師や管理栄養士の指導のもと、たんぱく質の摂取量を適切に調整する必要があります。禁煙や適度な運動も腎機能の保護に効果的とされています。食事・運動療法が十分行われているうえで考慮されるのが薬物療法です。
DKD 患者においてはエビデンスを有するSGLT2阻害薬(カナグリフロジン,ダパグリフロジン,エンパグリフロジン)を積極的に使用します。微量アルブミン尿・顕性アルブミン尿を呈しアルブミン尿が多い患者ほど有効性が高く、正常アルブミン尿患者でもある程度の有効性が期待される薬で、第一選択薬として使用されます。SGLT2 阻害薬は肥満,高血圧,高尿酸血症,貧血,高カリウム血症を改善することも期待されます。また、SGLT2 阻害薬投与開始後早期にeGFRの低下を認めるため、開始2週間~2カ月程度にeGFRを評価し、その後もeGFRが維持され、アルブミン尿が抑制されていることを確認します。
蛋白尿を有するDKD患者に高血圧症を合併した場合にはRA系抑制薬(ACE阻害薬またはARB)と呼ばれる降圧薬を投与します。ACE阻害薬とARBの併用は効果がなく高カリウム血症や急性腎障害のリスクを増加させるためどちらか一方のみ使用します。蛋白尿のないDKD患者に高血圧を合併した場合にはRA系抑制薬に加え,Ca拮抗薬や利尿薬が第一選択となります。SGLT2 阻害薬投与と同様、開始後早期にeGFRを測定しその後もeGFRが維持されアルブミン尿が抑制されていることを確認します。
ACE阻害薬/ARBが投与され血清Kが正常で微量アルブミン尿・顕性アルブミン尿を呈する場合、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の投与を考慮します。フィネレノンがCKD合併2型糖尿病を、エサキセレノンが高血圧症を適応症として使用できます。このようにDKD患者の降圧薬の選択はそれぞれの症例に適したものを選択することが重要です。
デュラグルチド,リラグルチド,セマグルチドは腎機能にかかわらず末期腎不全患者でも投与可能です。2型糖尿病DKD患者を対象とした臨床試験の結果はまだ報告されていませんがアルブミン尿を抑制する効果が期待できます。2型糖尿病患者で肥満とCKDを合併していて減量が必要な場合にはよい適応といえます。またチルゼパチドはGLP-1に加えてGIPというホルモン受容体も刺激する新しいタイプの治療薬です。2型糖尿病の血糖降下効果や体重減少効果が非常に高い一方で、腎臓への効果も最近の研究で示されつつあります。
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