たんぱく尿、血尿

たんぱく尿や血尿は自分で見てわかるということが少ない症状です。もちろん尿が真っ赤になっていればびっくりして受診を考えるでしょう。しかし、実際にはそうでないことがほとんどです。健康診断で見つかるのが一般的です。
通常、健康な方は尿にたんぱくや血液が混じるということはほとんどありません。
たんぱく尿、血尿は、一時的なものも多いが、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症など腎臓の病気の徴候である場合があり、たんぱく尿は腎臓病の進行や他の健康問題のサインとして重要な指標とされています。また、腎臓以外の病気が隠れている可能性もあります。血尿が主体の場合には、泌尿器のがんや結石などがないかも考慮する必要があります。
これらの病気はなかなか自覚症状(むくみやだるさなど)が現れないため、長い時間をかけて徐々に進行し、気付いた時には病気がかなり進行しているおそれがあります。そこで、蛋白尿や血尿といった尿異常が指摘された場合には、一時的なものかどうか、病気が潜んでいないかを精密検査によって調べる必要があり、定期的な検尿を繰り返す必要があるといえます。
たんぱく尿の主な原因
たんぱく尿の主な原因には、以下のようなものがあります。
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生活習慣病
糖尿病、高血圧、肥満
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免疫が関係するもの
IgA腎症(慢性糸球体腎炎)、溶連菌感染後糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、膠原病(ループス腎炎、血管炎など)
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遺伝が関係するもの
多発性嚢胞腎(PKD)、アルポート症候群
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薬が関係するもの
間質性腎炎
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その他
起立性たんぱく尿、アミロイドーシス
上記疾患で特に多いのは生活習慣病に関するものです。糖尿病や高血圧から慢性腎臓病(CKD)となりたんぱく尿が増えると腎臓の機能が低下していきます。IgA腎症は健診で異常指摘されて来院される比較的若年の患者さんに多く、また健康食品や薬などが原因で腎臓病を発症したんぱく尿が指摘されることもあります。
たんぱく尿の症状
大量のたんぱく尿があり、体のたんぱく質やアルブミンなどが失われる状況になれば自覚症状が出現しますが多くの場合症状が乏しいのが特徴です。足や顔のむくみや体重の増加で来院される方もいます。
むくみ(浮腫)
血液中のたんぱく質であるアルブミンは血管の中に水分を引き込む作用があり、しかしアルブミンが減少すると、血管内の水分が外に漏れ、皮下や臓器の外にたまることでむくみが起こります。肺にたまると呼吸困難が起こる可能性もあります。
体重増加:むくみによって余分な水分が体にたまることで体重が増加します。
これらの症状がある場合は、医師に相談することが重要です。
たんぱく尿の診断
検診などでたんぱく尿が認められた場合、当クリニックでは血液検査、尿検査、腎臓超音波検査を行い原因の検索を行います。
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血液検査
腎臓の機能を調べる項目(クレアチニン、eGFR、シスタチンCなど)、血液中のたんぱく質・アルブミン、原因となる疾患に関連する項目などを採血にて行います。
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尿検査
健診で行われる尿検査は多くの場合、定性という検査です。(±)(+1)(+2)などのように表記されているものです。スクリーニングや定期的に経過を診る場合には十分ですが、もう少し詳細な情報が必要な場合は、定量検査を行います。これにより1日にどれくらいのたんぱく尿があるのか予測することが出来ます。
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腎臓超音波検査(エコー)
エコー検査はほとんど痛みもなく、放射線による被爆もないので安全に行える検査です。腎臓の形を観察することで異常の原因を把握することができることもあります。
通常、腎臓は10㎝x5㎝程度の大きさで腎臓の機能が低下してくると小さく萎縮してきます。とくに高血圧が原因の場合、辺縁がデコボコして小さくなりやすいです。逆に糖尿病関連腎臓病や間質性腎炎などでは大きくなることもあります。それ以外にも尿路結石など尿の流れを止めてしまうものがあると水腎症という腎臓から尿管への移行部が拡張した状態になることがあります。また左右差がある場合、腎臓に流れる血流が低下するような腎血管性高血圧や生まれつき片方の腎臓が小さい低形成などあります。
他にも腫瘍や嚢胞、石灰化など様々な情報が得られる検査です。
たんぱく尿の治療
たんぱく尿の治療は、その原因や病状の進行具合によって異なります。原因が特定された場合には、その原因に対する適切な治療が行われます。例えば、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因である場合には、栄養指導や生活習慣の改善をはじめ原疾患の治療が必要になります。また、最近では腎臓の機能を保護するためSGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬など腎臓領域の新しい薬も使用されるようになり治療の選択肢も広がっていますが、治療法は患者の健康状態や病状の進行具合によって異なるため、医師との綿密な相談が重要です。
血尿の主な原因
尿潜血とは、尿に赤血球が混じっている状態であり尿試験紙による検査で確認されます。尿潜血陽性と肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)は区別され、内科的疾患では尿潜血陽性が多く、肉眼的血尿には結石、膀胱炎、悪性腫瘍など泌尿器科の疾患が多く含まれます。
- 尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石など)
- 尿路感染症(膀胱炎、前立腺炎など)
- 悪性腫瘍(膀胱がん、尿管がん、腎盂がんなど)
- 腎臓の内科的な病気(IgA腎症など)
血尿の診断
尿沈渣と呼ばれる検査で赤血球の形や数を調べ、腎臓や尿管、膀胱など出血している場所を特定します。また、尿の悪性細胞の検査(尿細胞診)や画像検査(腹部エコーやCT・MRI検査など)も必要に応じて行われます。
内科疾患で多いのはIgA腎症です。健診で指摘されるたんぱく尿、血尿がきっかけになります。確定診断のためには病理検査が必要で腎生検を行います。多くの場合、入院での検査になります。
血尿の治療
血尿の原因が尿路結石の場合、尿路の閉塞や感染症を伴わない小さな結石であれば、一般に治療は必要なく、自然に出てくることが多いです。一般的に大きさが10㎜未満であれば水分摂取と内服薬で自然排石されるのを待ちます。10㎜以上では泌尿器科での専門的な治療が必要になり体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経尿道的尿管結石破砕術(TUL)などがあります。ESWLは衝撃波を体外から結石に照射して砕き、TULは内視鏡を尿道から挿入してレーザーなどで砕き取り出す治療法です。
内科疾患であるIgA腎症では臨床所見と病理像で治療方針が決定し扁桃摘出術、ステロイドなどの点滴・内服の治療、腎臓の機能を保護する薬などを使用しますが、治療法は患者の状態や病状の進行具合によって異なるため、医師との綿密な相談が重要です。