2025年12月24日

心腎連関と高血圧管理の重要性
心腎連関(Cardio-Renal Syndrome: CRS)をご存じでしょうか?聞きなれない言葉だと思います。心臓の機能障害が腎臓の障害を引き起こし、またその逆も起こり得る双方向性の病態のことを言います。要するに心臓が悪ければ腎臓が、腎臓が悪ければ心臓がというようにお互いに影響を与え合うという事になります。そして高血圧は慢性腎臓病(CKD)や心血管疾患(CVD)に共通した重要なリスク因子です。このような理由からも血圧の管理がいかに重要なのかご理解いただけると思います。
心腎連関の病態形成にはどのような因子があるのか、古典的なものとして高血圧以外にも加齢、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満や尿毒症関連心血管危険因子として慢性炎症、酸化ストレス、骨・ミネラル代謝異常関連因子などが知られており集学的な治療戦略が必要とされています。
高血圧性腎硬化症
高血圧性腎硬化症とは高血圧が長く続くことで生じる腎臓の病変です。良性腎硬化症は急激な腎機能低下や他の臓器障害を伴う悪性腎硬化症とは異なり、高血圧が診断時にない場合でも、過去の高血圧や加齢、腎虚血によって腎臓病理検査で特徴的な所見がみられることがあります。
高血圧性腎硬化症には明確な診断基準がありません。臨床的に高血圧歴があり、血尿を認めず、尿たんぱくがみられる病態で、糖尿病や2次性の糸球体腎炎のない腎機能低下例を高血圧性腎硬化症と診断することが多いです。また、超音波検査で腎皮質が薄くなり、表面がデコボコとしてみられ萎縮しているような形態学的変化も診断の参考になります。
自覚症状が乏しいため気付かないうちに腎機能が低下し末期腎不全へと進行します。日本透析学会の統計調査でも透析導入患者の原因疾患として腎硬化症の占める割合は年々増加傾向にあります。
高血圧の治療:降圧薬の選択
血圧を下げる薬は数多くありますが、腎臓を守るためにはどのような種類の降圧薬を使用するのが良いのでしょうか?高血圧のある慢性腎臓病(CKD)の場合、たんぱく尿の有無が重要なポイントになります。たんぱく尿のある場合、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は腎保護に関するエビデンスが多く、他剤と比較した優位性が示されているため第一選択として使用されることが多いです。たんぱく尿が無い場合、優位性を示す十分なエビデンスが現在階ではないため病態に応じてACE阻害薬/ARB、カルシウム拮抗薬(CCB)、利尿薬から適切な降圧薬を選択することになります。利尿薬についてはCKDの進行のステージによって使い分けられ、早期ではサイアザイド系利尿薬、末期にはループ利尿薬が考慮されます。また、75歳以上の高齢者においてはACE阻害薬/ARBの使用時に注意が必要です。開始直後や脱水、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)との併用時には腎機能悪化や高カリウム血症を助長する可能性があるため腎機能や電解質を血液検査で確認しながら慎重に経過観察することも重要です。他の薬剤で生命予後や腎予後を改善する可能性があるものとしてミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)やアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)なども話題となっており今後の選択肢として期待されています。

