老化に関係?必須微量元素「セレン」って何?|東新宿あらい内科クリニック|東新宿駅の内科・脳神経内科・腎臓内科

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老化に関係?必須微量元素「セレン」って何?

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2025年11月05日

セレンとは

セレンは、私たちの体にとって欠かせない微量元素のひとつです。美白点滴などに使われるグルタチオンをご存じの方も多いかもしれませんが、これは体内で重要な抗酸化物質として働いており、抗酸化酵素「グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)」の基質となります。セレンはこのGPxの構成成分として、酸化ストレスを軽減し、免疫機能を調整する役割を担っています。不足しても過剰に摂取しても健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な摂取が重要です。セレンは藻類、魚介類、肉類、卵黄などに多く含まれており、日本では通常の食事で不足することはありません。
セレンが発見されたのは1817年のことで、スウェーデンの化学者イェンス・ヤコブ・ベルセリウスが硫酸製造の過程で残った鉱泥から新しい元素を分離しました。彼はこの元素に、ギリシャ神話の月の女神「セレーネ」にちなんで「セレン」と名付けました。発見当初は、セレンは主に産業用途で利用されており、ガラス製造や電子機器の材料として活用されていました。特に光導電性の性質は、初期の写真技術や整流器などで重要な役割を果たしました。
20世紀に入ると、セレンの生理学的な役割が徐々に明らかになってきます。1957年には、セレンが哺乳類の生命活動に不可欠であることが初めて示されました。この発見により、セレンがGPxの構成成分として細胞を酸化ストレスから守る働きを持つことが分かり、健康維持におけるその重要性が広く認識されるようになりました。GPxは、過酸化物を水と酸素に分解することで細胞内の酸化的損傷を防ぎ、セレンの役割が注目されるきっかけとなりました。

セレンの役割

セレンは、ヒトを含む多くの生物にとって正常な生理機能を維持するために不可欠な存在です。抗酸化作用を通じて細胞を守るだけでなく、免疫機能の調整や甲状腺ホルモンの代謝にも関与しています。これにより、老化や慢性疾患の予防、エネルギー代謝の維持、さらには生殖機能の向上にも役立っています。
抗酸化作用に関しては、セレンがGPxなどの酵素を通じて細胞の損傷やDNAの変異を防ぎ、がんや心血管疾患のリスクを低減させることが知られています。また、免疫細胞の働きを調整することで感染症への抵抗力を高める効果もあり、特に高齢者や免疫力が低下している人々にとっては重要な栄養素です。
甲状腺機能においても、セレンはホルモンの代謝を助け、体の代謝率を正常に保つ役割を果たします。セレンが不足すると、甲状腺機能が低下し、代謝の低下や体重増加、疲労感などの症状が現れることがあります。
さらに、生殖機能にもセレンは深く関わっています。男性では精子の運動性や形成に関与し、不妊のリスクを低減させるほか、女性では卵巣機能の維持や妊娠率の向上に寄与します。
このように、セレンは心血管系、神経系、筋骨格系など多くの生理系においても重要な役割を担っており、全身の健康維持に貢献しています。血管の健康維持および動脈硬化予防に寄与するほか、神経細胞の保護作用を介して認知機能の改善にも資することが報告されています。また、筋収縮ならびに筋再生の促進を通じて運動機能の向上にも関与すると考えられています。

セレン不足と過剰症

セレンは、体にとって必要不可欠な微量元素ですが、不足しても過剰に摂取しても、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。セレンが不足すると、特定の地域で発生する疾患との関連が指摘されています。たとえば、中国の克山省で多発する心筋症「克山病」は、セレンの著しい欠乏が原因とされており、また「カシン・ベック病」は関節や骨の変形を引き起こす疾患で、こちらもセレン欠乏が発症に関与しています。これらの病気は、セレン含有量が極めて低い土壌で育った作物を主食とする人々に多く見られる傾向があります。
一方で、セレンを過剰に摂取すると「セレノーシス」と呼ばれる中毒症状を引き起こすことがあります。その症状には、脱毛や爪の異常、皮膚の変色、呼吸困難、消化器系の不調などが含まれます。通常の食事からセレン過剰症になることは稀ですが、サプリメントの過剰摂取や、セレンを含む環境汚染が原因となることがあります。極端な場合には、命に関わる事態に至ることもあるため、セレンの摂取量を適切に管理することが非常に重要です。

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