2025年12月02日
必須微量元素・ミネラルは体内でごく少量しか必要とされないものの、生命維持に不可欠で、体内で合成できないため食事などから摂取する必要があります。ここでは代表的なものについて説明します。
セレン(Se)
抗酸化作用を通じて細胞を守るだけでなく、免疫機能の調整や甲状腺ホルモンの代謝にも関与しており最近、注目されている微量元素です。これにより、老化や慢性疾患の予防、エネルギー代謝の維持、さらには生殖機能の向上にも役立っています。
こちらもご覧ください。老化に関係?必須微量元素「セレン」って何?
鉄(Fe)
女性では月経で血液が失われてしまうため、貧血につながりやすい状況にあります。いわゆる鉄欠乏性貧血の原因となります。鉄が不足すると無力感や食欲不振などが起こることがあります。動物性食品に含まれる鉄の方が、植物性食品より吸収率が高いため食事が植物性食品ばかりに偏らないようにすることが大事です。鉄は健康な人が通常の食事で過剰症となることはありませんが、サプリメントや鉄製剤は適切に利用しないと過剰摂取が起こることがあります。
銅(Cu)
銅は鉄の吸収や貯蔵をする際に働くほか、骨髄でヘモグロビンを産生するのにも関連するため欠乏すると貧血や成長障害などが起こることがありますが、通常の食事をしていれば銅が不足することはありません。しかし、亜鉛を大量に摂取してしまうと銅の吸収が妨げられることがありますので亜鉛の取り過ぎには注意が必要です。
亜鉛(Zn)
欠乏すると味覚障害や皮膚炎、食欲不振、免疫機能の低下などの症状を呈することがあります。普段の食事だけで亜鉛が過剰になることはありませんが、薬剤として亜鉛を継続的に過剰摂取した場合には、胃腸障害や免疫障害、神経症状、銅や鉄の吸収を妨げることがあります。
マンガン(Mn)
マンガンスーパーオキシドジスムターゼなどの酵素の構成成分として、抗酸化作用に関連しています。また骨代謝、糖や脂質の代謝などにかかわっています。成人の体内には10~20 mgのマンガンが含まれています。食品中のマンガン含有量は、一般に植物性食品に多く、動物性食品に少ないです。
ビタミンB12
必須微量元素であるコバルト(Co)が構成成分であり、コバルトは赤血球やヘモグロビンが生成される際に鉄の吸収に関連しています。鉄を補充しても改善されない貧血の原因となることがあります。
葉酸:ビタミンB12と共に赤血球の生成に関与しています。細胞の生産や再生を助け、胎児の成長に不可欠な栄養素で、特に妊娠初期に胎児の脳や脊髄が作られる際に重要で、不足すると先天性疾患のリスクが高まります。
カルシウム(Ca)
骨や歯の形成に不可欠なミネラルであり、体内に最も多く存在するミネラルです。また、神経に存在し神経伝達や筋肉収縮、血液凝固などの重要な生理機能に関与しています。カルシウムの不足は、骨粗鬆症や骨折のリスクを高めるだけでなく、筋肉のけいれんや心臓の異常な収縮を引き起こすことがあります。成人の体内には約1.2kgのカルシウムが存在し、その99%は骨と歯に蓄えられています。残りの1%は血液や筋肉、神経に存在しています。
リン(P)
カルシウムとともに骨や歯の形成に関与する重要なミネラルです。リンは、エネルギー代謝や細胞の成長、修復に不可欠です。リンの不足は稀ですが、過剰摂取はカルシウムの吸収を妨げ、骨の健康を損なう可能性があります。体内のリンの約85%は骨や歯に存在し、残りの15%は細胞膜やDNA、ATP(アデノシン三リン酸)などのエネルギー分子の構成成分として機能します。
マグネシウム(Mg)
酵素反応に関与し、神経機能や筋肉収縮を調整する重要なミネラルです。マグネシウムの不足は、筋肉のけいれんや不整脈、疲労感を引き起こすことがあります。体内のマグネシウムの約60%は骨に蓄えられ、残りは筋肉や軟組織、血液に存在します。
ヨウ素(I)
ヒトの甲状腺ホルモンの合成に不可欠です。健康食品などからの摂りすぎは、逆に甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。特に橋本病などを持つ方は注意が必要です。セレン含有酵素は、T4をT3に変換する過程で重要な役割を果たしており、さらにビタミンAや鉄の欠乏もヨウ素欠乏症を悪化させる可能性があることが知られています。

