片頭痛予防の新たな選択肢 CGRP関連製剤|東新宿あらい内科クリニック|東新宿駅の内科・脳神経内科・腎臓内科

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片頭痛予防の新たな選択肢 CGRP関連製剤

片頭痛予防の新たな選択肢 CGRP関連製剤|東新宿あらい内科クリニック|東新宿駅の内科・脳神経内科・腎臓内科

2025年6月12日

片頭痛予防の新たな選択肢 CGRP関連製剤

片頭痛は多くの人が悩む疾患であり、特に慢性片頭痛の方にとっては、日常生活に大きな影響を与えます。片頭痛の病態には、神経系や血管の働きが深く関与しており、その中でも CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド) は重要な役割を果たしています。最近の研究により、CGRPが片頭痛の発作誘発に関与することが明らかになり、それを標的とする薬剤が開発されました。これらのCGRP関連製剤は、従来の治療薬とは異なる作用機序を持ち、片頭痛の新しい予防・治療法として注目されています。本稿ではCGRP関連製剤について解説していきます。

CGRPとは?片頭痛における役割

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛の病態に深く関与する神経ペプチドとして知られています。1982年に同定されたこの37個のアミノ酸からなるペプチドは、末梢の感覚神経や中枢神経系のさまざまな部位で産生されることがわかっています。

CGRPの血管拡張作用と片頭痛との関係

CGRPは、1980年代に三叉神経血管系の重要な調節因子であることが示されました。特に脳動脈において強力な血管拡張作用を持つことが確認され、片頭痛の病態に深く関与していると考えられています。1990年には、片頭痛急性期における血漿中のCGRP濃度が上昇することが報告され、発作時の神経伝達物質としての役割が注目されました。さらには片頭痛の症状が改善するとともに、CGRP濃度が低下することが確認されており、CGRPの制御が片頭痛治療において重要であることが示唆されています。

CGRPの片頭痛誘発作用と治療標的

片頭痛の方にCGRPを注射すると、持続性の片頭痛様の頭痛が誘発されることが明らかになりました。このことから、CGRPは単に血管拡張に関与するだけでなく、疼痛そのものを引き起こす重要な因子であることが示されました。この発見をもとに、CGRPシグナル伝達の遮断が片頭痛の予防や治療に有効である可能性が指摘され、現在のCGRP標的治療の基盤となっています。

CGRP関連製剤:作用機序と種類

CGRP関連製剤は、CGRPの働きを抑制することで、片頭痛発作を予防・軽減します。これらの薬剤は大きく2種類に分類されます

1.抗CGRP抗体

このタイプの薬剤は、CGRP分子の作用を阻害します。CGRPの受容体への結合を防ぐことで、片頭痛発作の誘発を抑えることができます。

• エムガルティ(ガルカネズマブ)
• アジョビ(フレマネズマブ)

2.抗CGRP受容体抗体

CGRPそのものではなく、CGRPの受容体に作用し、その活性を阻害することで痛みの発生を抑制します。

• アイモビーグ(エレヌマブ)

有効性と副作用

臨床試験では、CGRP関連抗体薬の有効性が確認されており、約半数で頭痛日数が50%減少、約10人に1人で頭痛の消失が認められました。またCGRP関連製剤は片頭痛の病態に特異的に作用するため、副作用が少なく、継続しやすいというメリットがあります。特に従来の治療では効果不十分だった片頭痛の方にとって、新たな選択肢となっています。
次回はCGRP標的治療の進展について解説します。

文責:東新宿あらい内科クリニック 副院長 新井祐子(日本神経学会専門医)

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